本記事では、私が実際にスペインのバスケの現場で見てきた「生の」練習メニューをそのまま掲載しております。
是非皆様のバスケチームでもこの練習をそのまま取り入れて頂いたり、アレンジしたりして、スキルアップに役立て頂きたいです。
大事なことは練習メニューを知ることではなく、練習メニューをどのように用いて選手を育成していくかに尽きます。一貫した目的意識を持ってバスケットボールに取り組んで頂ければこの上ない喜びです。
スペーシングオフェンスの基本〜ローポストの使い方〜
練習のジャンル
スキルトレーニング(ポジショニング)
実施していた年代
U-16カテゴリ
練習の目的
- フロアバランスを適切に保つポジショニングを学ぶため
- アウトサイドとインサイドが連動してポジショニングを行うことができるようになるため
- 他の味方のプレイヤーの動きを見て、動き方を選択することができるようになるため
必要な道具
- ボール2つ
練習内容の説明
Part1 ダウンスクリーンからローポストを使う
- オフェンスはTOPと両ウィング、ローポストにポジションを取ります。(上図参照)
- この時点で、プレイヤー同士の距離感は4〜4.5mを保ちます。
- ローポストが空いているサイドのウィングのプレイヤー(上図では②のプレイヤー)がボールを持ってスタートします。
- まず、②はTOPのプレイヤー①にパスを捌き、ゴール方向へカットします。
- ①にボールが渡るタイミングで、逆サイドのウィングのプレイヤー③はローポストにいる④にダウンスクリーンをセットします。
ココがPOINT!
- 上記で、なぜ②のプレイヤーがゴール方向へカットするかというと、スペインの4アウトポジションでのオフェンスでは、同サイドのコーナーにあと1人のプレイヤーが位置しているのがオーソドックスな形だからです。つまり、②がステイしてしまうと、コーナーの選手も動くことができなくなるため、同サイドでは動きが停滞してしまうことになります。
- また、基本的にTOP・ウィング・コーナーと3人のプレイヤーが並んでいて、TOPあるいはコーナーにボールがある場合にはウィングの選手はゴールカットをすることが多いです。スペースをうまく使うと同時に、固まっているディフェンスを引き剥がす意味でも有効です。
③のスクリーンセット後の状態
- ローポストの④は③のスクリーンを使ってウィングに上がります。
- TOPの①はタイミング良く④にパスを出します。
- ②は逆サイドに切れることなく、ショートコーナーへポジションを修正、ステイします。
④にボールが渡った後の状態
- ダウンスクリーンを仕掛けた③はその場で反転し、シールを行います。ディフェンスの状況にもよりますが、ペイントエリアに入り込むようにディフェンスを押し込みながらシールすることが理想です。
- ④は③がポジションを取れたことを確認し、パスします。③はパスを受けたらシュートをします。
ココがPOINT!
- この動き方は、インサイドの大きなプレイヤーのディフェンスを外に引っ張り出し、②や③のウィングプレイヤーでペイントエリアをアタックしようという狙いがあります。
Part2 ドリブルダウンからローポストを使う
- Part1と同様、オフェンスはTOPと両ウィング、ローポストにポジションを取ります。(上図参照)
- この時点で、プレイヤー同士の距離感は4〜4.5mを保ちます。
- ローポストが空いているサイドのウィングのプレイヤー(上図では②のプレイヤー)がボールを持ってスタートします。
- まず、TOPのプレイヤー①にパスを捌き、②はゴール方向へカットします。
- ゴールカット後、TOPのオフェンスは、②が元いたウィングの位置までドリブルダウンをします。
- 逆サイドのローポストにいる④はインサイドのスペースを開けるために、コーナーに広がるようにポジション修正を行います。
ココがPOINT!
- ②がミスマッチを突けると判断した場合にこのプレーが選択されます。その意図を瞬時に理解し、インサイドの④は速やかにスペースを②に譲る必要があります。
②のゴールカット後の状態
- ②は逆サイドに流れずに、ローポストでシールし、ポジションをしっかりと取ります。
- ①は②がポジションを取れたことを確認できたら、パスを出します。②はそのままシュートを打ちます。
- ②がいるローポストにボールが入ったことを確認したら、逆サイドの③と④はそれぞれTOPとウィングにポジションを修正します。ローポストからのアウトレットパスを出しやすくするためです。
ココがPOINT!
- 逆サイドのプレイヤーが適切なポジショニングを行うことが大切です。ローポストにボールが入ると、ディフェンスはそちらに気を取られ、アウトレットパスへの対応が遅れがちになります。最低でもパスコースが2つあるように周りは動く必要があります。
Part3 判断を用いたスペーシングオフェンス
この練習では、Part1とPart2を織り交ぜて、瞬時にコートの状況を把握し、どちらのプレーを選択するかという判断の速さをトレーニングすることがメインになります。
Part2の後の図
- Part1とPart2と同じように展開をします。シュートを打った後の動きから連動させてプレーを続けていきます。
- 次の組に入るプレイヤー⑤はボールを持ってスタンバイします。
- シュートを打った②は、可能であればすぐに逆サイドのオフェンスに参加します。しかし、タイミング的に間に合わないこともありますので、それをTOPのプレイヤーは瞬時に判断しなければなりません。
3−1:②が逆サイドに間に合うパターン⇨Part1のオフェンスに繋げる
- 控えていた⑤はTOPにいる③にパスを出します。③は②がオフェンスに参加できると判断したら、「逆サイド!」などと、声を出して②に指示を出します。
- ②はシュート後、逆サイドのローポストに移動します。
- ④は③の声や②の動きを見て、ダウンスクリーンが必要だと判断し、セットするために動きます。
④のダウンスクリーン後の状態
- その後はPart1と同様の動き方をします。②は④のスクリーンを使って逆サイドのウィングに上がり、③からパスを受けます。
- ④はスクリーン後にシール、ポストアップし、②からボールを受けてシュートです。
3−2:②が逆サイドに間に合わないパターン⇨Part2のオフェンスに繋げる
- 控えていた⑤はTOPにいる③にパスを出します。③は②がオフェンスに参加できないと判断したら、「ローポ!」などと、声を出して⑤に指示を出しながら、ドリブルダウンをします。
- ⑤は③の指示の声とドリブルダウンを見て、ゴールカットを行います。
- ②は⑤がカットしてくるのを見たら、コート外に出ます。
③のドリブルダウン後の状態
- その後はPart2と同様の動き方をします。③は⑤がローポストでポジションを確保したのを確認したら、パスを入れます。⑤はパスを受けたらそのままシュートです。
- この場合、次の控えの選手は両ウィングに準備をします。
ココがPOINT!
- TOPにいるプレイヤーがゴール下の状況がどうなっているのか、素早く判断をする必要があります。
- また、判断をしたらチームメイトに声を出したりジェスチャーをすることで攻撃の意図を伝えるようにしなくてはなりません。チームメイトは基本的には勝手に動き出してはいけません。
- 仮に、TOPのプレイヤーの判断が悪いと考えたら、そのプレイヤーは大きな声で指示をする必要があります。流れのまま単調に行ってしまうと、この練習は全く意味がありません。各選手が常にコートのバランスを考え、判断し、チームとして意図を統一できるようになることが最終ゴールです。いきなりそれを実行することが難しいという理由から、TOPのプレイヤーが主体となって行うとしているだけです。
Part4 ドリブルハンドオフからフロアバランスを整える
- Part1(2)と同様に、上図のようにポジションを取ってスタートします。
- ②からTOPの①にパスをします。
- ボールを受けた①は逆サイドに向かってドリブルをします。
- ①がドリブルダウンするのを見て、④はドライブスペースを開けるため、ペイントエリアから離れるように動きます。
- ③はハンドオフパスを受けるために①に向かって動きます。①の判断によって、その後の動きが決まっていきます。
③がハンドオフパスを受けてドライブをした場合
- ①からハンドオフを受けた③がミドルサイドをドライブします。
- ①と④は③のドライブに合わせてポジションを移動します。
- ③はドライブからレイアップシュートを打ちます。
- 次の控えの選手は一番最初に④がいた位置に入ります。
①がハンドオフパスをせず、そのままドライブした場合
- ③は①と入れ替わるようにTOPの位置にポジション移動します。
- ④は①のドライブからキックアウトパスを受けられるようにウィングにポジションを上げます。
- ①はドライブからレイアップシュートを打ちます。
- 次の控えの選手は一番最初に④がいた位置に入ります。
ココがPOINT!
- ①は自分がドライブをすると判断した場合にはハンドオフをしようとしている時とドライブの時との間に、スピードに変化をつけることが大切です。
- また、プッシュクロスやブリッツをする時と同じように、縦に長く低いドリブルを突き出すようにします。
- ③は①からハンドオフを受けた場合、膨らまないようにドライブしましょう。スクリーンを使う時と同じように、ブラッシングをするように①のすれすれをゴールに向かって縦に鋭くドライブをしましょう。