本記事では、私が実際にスペインのバスケの現場で見てきた「生の」練習メニューをそのまま掲載しております。
是非皆様のバスケチームでもこの練習をそのまま取り入れて頂いたり、アレンジしたりして、スキルアップに役立て頂きたいです。
大事なことは練習メニューを知ることではなく、練習メニューをどのように用いて選手を育成していくかに尽きます。一貫した目的意識を持ってバスケットボールに取り組んで頂ければこの上ない喜びです。
ハーフコート セットオフェンスの確認 (ホーンズセットからの派生)
練習のジャンル
戦術確認(オフェンス)
実施していた年代
U-18(Junior)カテゴリ
練習の目的
- 各選手の動き方の確認をするため
- 各選手が動くタイミングを合わせるため
- 身体の向きや視線など細かい部分を指摘、修正するため
必要な道具
- 5人1チームにつき、ボール1つ
練習内容の説明
Set1 Mano(ホーンズセット、Aセット)
エントリーはホーンズセット(Aセット)の形
- 上図のように、オフェンスのエントリーは2019年ではお馴染みとなった「ホーンズセット」の形を作ります。TOPに1人、各エルボー(ペイントエリアとフリースローラインの交点)に1人ずつ、各コーナーに1人ずつの形です。それぞれの選手を線で繋ぐと、アルファベットの「A」の逆の形になることから「Aセット」とも呼ばれます。
- このセットは、TOPでボールを保持する選手がスピードがあり、突破力のある場合に非常に好まれます。主にポイントガードのポジションの選手がその役割を担います。しかし、本場アメリカのバスケ、特にNBAでは、シュート力があり、個人技に長けたシューティングガードの選手も同様にTOPに入るケースがあります。
- 「Mano」と紹介していますが、スペイン語でManoとは「手」を意味します。なぜかというと、このコールではハンドオフ(手渡し)パスを用いるためだと考えられます。
セットの手順
- ボールを持ったTOPの選手(①番)が、エルボーに立っているどちらかの選手(今回のケースでは④番)を3Pラインの外にポップアウトするように指示を出し、ボールをパスします。
- ①はパスを追いかけるような形で④に近づき、すぐに手渡しでボールを返してもらいます。①は自分のディフェンスの状況を判断し、後追いやファイトオーバーでズレがあるのであればそのままゴールに向かってドライブを選択します。
ボールを受けた④から①がボールを受け取った後
- ①のディフェンスが後追いではなく、ゴール方向に下がって守ってきたケース(アンダーやスライド、スイッチでの対応)で、そのままゴール方向に直線的なドライブが仕掛けられない場合です。
- ④はその場で①のディフェンスに対してスクリーナーとなります。その同タイミングで、逆のエルボーに立っていた選手(⑤番)はスクリーナーをマークしている選手に対してピック(スクリーン)をかけます。いわゆるスペインピックと呼ばれるもので、様々な世界大会で猛威を振るっている強力なセットプレーの一つです。
- スクリーン後の動き方としては、④はTOPの方向にポップアウトし、⑤はゴール方向にダイブ、あるいはハイポスト付近でステイし、①のドライブの邪魔をしないようにします。
- 両コーナーの選手は基本的には動かずにペイントエリアにスペースを空けておきます。ドライブが始まり、自分のディフェンスがドリブラーに寄った場合には、ディフェンスから遠ざかるように動き、パスを受けやすいようにポジションを取り直します。
ココがPOINT!
- ①は手渡しパスと同時に走り出しましょう。ほとんどのディフェンスは、オフェンスがパスをすると一瞬気が緩みます。そのタイミングを逃さないことが大切です。イメージとしては、サッカーのパス&ゴーの形です。ドリブルで移動する代わりに、パスをして、すぐにそのボールを受け直すことで、より安全に、そしてより速く移動することができます。
- ディフェンスの状況を見て、判断することが大切です。セットプレーだからといって、同じタイミングで同じ動き方をしていても全く意味がありません。オフェンスの仕掛ける狙いは前述の通り、手渡しパスの直後、ピックプレー後のズレ(一瞬のアウトナンバー状態)です。ボールを受ける前、ピックをかける前に、各選手が最低でも自分のディフェンスとスクリーナー(もしくはドリブラー)のディフェンスの状態は把握できるようにしましょう!
- 特に重要なのが、⑤と④の両エルボーの選手の動き出しのタイミングです。⑤は①がドリブルを始めた段階で動き出したのでは間に合いません。①のディフェンスを見て、直線的にドライブができないなと判断したらすぐにピックをセットする動きに入ります。また、④は①が通過するまでは勝手に動いていけません。自分のディフェンスが①のドリブルを後ろからチップできてしまうかもしれないからです。ドライブを邪魔しないように、且つ攻めきれなかった場合に①からTOPへのリターンパスができるように動くことが重要です。
- 常にパスコースを3方向に作れるようにポジショニングすることです。①は両コーナーと⑤のダイブを狙いつつ、自分のドライブを生かします。そのため、その3選手はヘルプディフェンスの状態を見て、一番的確なポジショニングを探して動く必要があります。
- ①の状況判断に全てを一任する形となるため、ターンオーバーには十分に気をつけましょう。特に手渡しパス〜ピックプレーの流れの中ではオフェンスとディフェンスが狭いエリアで混在する形となるため、ミスが起こりやすいです。加えて、TOPでのミスはそのまま失点に繋がります。無理に個人プレーで攻めようとせず、ズレが何処に生まれるのかをしっかりと見極めましょう!